東京地方裁判所 平成6年(ワ)17185号 判決 1999年2月26日
岐阜市山口町二二番地
原告
田中美穂
岐阜県羽島市福寿町浅平一丁目三二番地
原告
株式会社日健総本社
右代表者代表取締役
田中美穂
原告両名訴訟代理人弁護士
中吉章一郎
右補佐人弁理士
遠山俊一
東京都中央区銀座五丁目六番七号
被告
マイクロアルジェコーポレーション株式会社
右代表者代表取締役
竹中裕行
右訴訟代理人弁護士
中島敏
同
伊藤保信
主文
一 原告らの請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は原告らの負担とする。
事実及び理由
第一 請求
一 被告は、別紙物件目録一記載の製品を製造、販売してはならない。
二 被告は、原告株式会社日建総本社に対し、金三六七二万円及びこれに対する平成六年九月二三日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二 事案の概要
一 本件は、原告らが、被告に対して、以下のような請求をした事案である。
1 原告田中美穂(以下「原告田中」という。)の請求
後記一1記載の特許権(以下「本件特許権」といい、その特許発明を「本件発明」という。)に基づき、被告が製造・販売する別紙物件目録一記載の製品(以下「被告製品一」という。)の製法(以下「被告製法一」という。)が本件発明の技術的範囲に属するとして、被告製品一の製造・販売の差止めを求める。
2 原告株式会社日建総本社(以下「原告会社」という。)の請求
本件特許権について原告田中から設定を受けた独占的通常実施権に基づき、<1>被告が製造・販売する被告製品一の製法が本件発明の技術的範囲に属するとして、被告製品一の製造・販売の差止めを求めるとともに、<2>被告が平成五年九月から同六年八月までの間に製造・販売していた別紙物件目録二ないし四記載の製品(以下、それぞれ「被告製品二」ないし「被告製品四」という。)の各製法(以下、それぞれ「被告製法二」ないし「被告製法四」という。)がいずれも本件発明の技術的範囲に属するとして、不法行為による損害賠償金三六七二万円及びこれに対する不法行為の後である平成六年九月二三日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
一 争いのない事実
1 原告田中の特許権
原告田中は、次の特許権を有する。
(一) 特許番号 第一七九一七一七号
(二) 発明の名称 ドナリエラ藻体含有軟質カプセル食品の製造法
(三) 登録年月日 平成五年一〇月一四日
(四) 出願年月日 昭和六三年二月二五日
(五) 出願番号 特願昭六三-四〇七五五号
(六) 出願公告年月日 平成四年一二月一日
(七) 出願公告番号 特公平四-七五七五二号
(八) 特許請求の範囲 本判決添附の特許公報(以下「本件公報」という。)の該当欄記載のとおり
2 構成要件の分説
本件発明の構成要件は、次のとおりに分説される。
(一) カプセル封入懸濁液の三〇〇重量部に、一~一〇重量部の天然ロウと一~一〇重量部の乳化剤とを混和して得た乳化剤液に、上記カプセル封入懸濁液の三〇〇重量部に対する割合が、一〇~二四〇重量部のドナリエラ藻体乾燥粉末と一〇~二六〇重量部の動植物油脂と一~一〇重量部の抗酸化剤とを、真空下で攪拌処理して懸濁液を得た後、
(二) 得られた懸濁液を、不活性ガスの存在下で、遮光性軟質カプセルに充填することを特徴とする
(三) ドナリエラ藻体含有軟質カプセル食品の製造法
3 被告の行為
(一) 被告は、平成八年一月以降、被告製品一を製造・販売している。
(二) 被告は、平成五年九月から同六年八月までの間、被告製品二ないし四を製造・販売していた。
二 争点
1 被告製品一ないし四につき、特許法一〇四条により、本件発明の方法により生産されたものと推定されるか否か。
2 被告製法一ないし四の内容
3 被告製法一ないし四が本件発明の各構成要件を充足するか否か。本件発明と均等か否か。
4 原告会社が、本件特許権についての独占的通常実施権者であるか否か。また、差止請求権の主体となるか否か。
5 原告会社の損害額
三 争点に関する当事者の主張
1 争点1(特許法一〇四条適用の有無)について
(一) 原告らの主張
本件発明は物を生産する方法の発明であるところ、本件発明の目的物であるドナリエラ藻体乾燥粉末を含有する軟質カプセル食品は、本件特許出願前日本国内において公然知られた物ではない。そして、被告製品一ないし四は、いずれも本件発明の目的物と同一のドナリエラ藻体乾燥粉末を含有する軟質カプセル食品であるから、特許法一〇四条により、本件発明の方法によって生産されたものと推定される。
(二) 被告の主張
ドナリエラ藻体及び軟質カプセルは、いずれも本件特許出願前に日本国内において公然知られていたものである。また、ドナリエラ藻体乾燥粉末を含有する軟質カプセル食品は、本件特許出願前に日本国内で市販されていたクロレラ藻体等を含有する軟質カプセルの中身を、同じ藻類であるドナリエラ藻体に置き換えたものにすぎない。
したがって、本件発明の目的物は、本件特許出願前日本国において、当該技術の分野における通常の知識を有する者がその物を製造する手ががりを得られる程度に知られていたものであるから、本件発明について特許法一〇四条の適用はない。
2 争点2(被告製法の内容)について
(一) 被告の主張
被告製法一ないし四は、それぞれ別紙製法目録一ないし四記載のとおりである。
(二) 原告らの主張
被告が主張する被告製法一ないし四(別紙製法目録一ないし四)に対する認否及び否認部分についての主張は以下のとおりである。
(1) 被告製法一について
<1> 第1項について
ア 第1項(1)のうち、「均一に」との点は否認し、その余は認める。
イ 第1項(2)のうち、「減圧タンクに投入して減圧下で攪拌して」との点は認め、その余は否認する。
「コロイドミルで粉砕する」との点は、「コロイドミルで整粒する」とすべきである。また、減圧下での攪拌は、真空攪拌のことであり、それは気泡を脱泡するためのみに行うものではない。
<2> 第2項について
軟質ゼラチンカプセル基質として、ゼラチン、グリセリン、逆浸透圧ろ過水のみを使用し、着色剤を使用しないことは認め、その余は否認する。
<3> 第3項について
「窒素ガスを使用することなく空気開放下で」との点は否認し、その余は認める。
懸濁液の充填は密封状態で行う。
<4> 第4項について
認める。
(2) 被告製法二について
<1> 第1項について
ア 第1項(1)のうち、「攪拌によって生ずる気泡を脱泡するために減圧する」との点は否認し、その余は認める。
右否認部分は、「真空攪拌する」とすべきである。
イ 第1項(2)のうち、「減圧脱泡しつつ攪拌する」との点は否認し、その余は認める。
右否認部分は、「真空攪拌する」とすべきである。
ウ 第1項(3)のうち、「脱泡のため減圧して攪拌する」との点は否認し、その余は認める。
右否認部分は、「真空攪拌する」とすべきである。
<2> 第2項について
軟質ゼラチンカプセル基質として、ゼラチン、グリセリン、精製水のみを使用し、着色剤を使用しないことは認め、その余は否認する。
<3> 第3項について
「窒素ガスを使用することなく空気開放下で」との点は否認し、その余は認める。
懸濁液の充填は密封状態で行う。
<4> 第4項について
認める。
(3) 被告製法三について
被告製法二に対する認否等と同じ
(4) 被告製法四について
被告製法一に対する認否等と同じ
3 争点3(構成要件充足性、均等)について
(一) 原告らの主張
被告製法一ないし四(前記2(二)のとおり、別紙製法目録一ないし四記載の製法のうち、原告らが認める部分及び否認する部分の原告らの主張を前提とする。)は、以下のとおり、本件発明の各構成要件を充足し、そうでないとしても、これと均等である。
(1) 被告製法一について
<1> 構成要件(一)について
ア 被告製法一における「ミツロウ」は、構成要件(一)における「天然ロウ」に当たると同時に「乳化剤」にも当たるから、被告製法一における「一五重量部のミツロウ」は、構成要件(一)の「一~一〇重量部の天然ロウと一~一〇重量部の乳化剤とを混和して得た乳化剤液」に当たる。仮にそうでないとしても、「ミツロウ」は乳化剤の性質があり、構成要件(一)の「天然ロウと乳化剤とを混和して得た乳化剤液」と使用目的及び作用効果が同じであり、置換可能性及び置換容易性があるから、これと均等である。
イ 被告製法一における「九〇・九重量部のドナリエラ藻体乾燥粉末」は、構成要件(一)の「一〇~二四〇重量部のドナリエラ藻体乾燥粉末」に当たる。
ウ 被告製法一における「合計一四二・七重量部のしそ油、食用ゴマ油、米胚芽油」は、構成要件(一)の「一〇~二六〇重量部の動植物油脂」に当たる。
エ 被告製法一における「コピトールF-一〇〇〇-二中の天然ビタミンE」及び「アセロラ粉末中の天然ビタミンC」は、いずれも構成要件(一)の「抗酸化剤」に当たる。そして、右天然ビタミンE及び天然ビタミンCの合計一四・五重量部以上のうち、一〇重量部を超える部分は、本件発明と異なる特段の作用効果をもたらすものではなく、単なる付加増量であるから、被告製法一における「合計一四・五重量部以上の天然ビタミンE及び天然ビタミンC」は、構成要件(一)の「一~一〇重量部の抗酸化剤」に当たり、そうでないとしても、これと均等である。
オ 被告製法一におけるカプセル封入懸濁液のその他の成分は、単なる付加物にすぎない。
カ 被告製法一において、各成分を「減圧タンクに投入して減圧下で攪拌する」ことは、構成要件(一)の「真空下で攪拌処理する」ことに当たる。
<2> 構成要件(二)について
ア 被告製法一において、懸濁液のカプセルへの充填は、懸濁液を、密封タンクに封入して、密封構造の自動カプセル成型機にセットし、短時間にそれらの中に存する空気下で行われるところ、空気は窒素を七八・一パーセント含有する不活性な気体であるから、構成要件(二)の「不活性ガス」に当たる。したがって、被告製法一における懸濁液のカプセルへの充填は、構成要件(二)における「不活性ガスの存在下で」行われているといえる。仮にそうでないとしても、被告製法一では、抗酸化剤である天然ビタミンE及び天然ビタミンCが四・五重量部増量されている上、懸濁液を、密封タンクに封入して、密封構造の自動カプセル成型機にセットし、短時間にそれらの中に存する空気下で充填するところ、このような方法は、ドナリエラ藻体中のβ-カロチンを破壊することなく、その含有量を逓減することなく、ドナリエラ藻体の有効成分を安定に保有した健康上有用なカプセル食品が得られるという作用効果において、構成要件(二)における「不活性ガスの存在下で」充填を行う方法と同一であり、右方法と置換可能性、置換容易性があるから、これと均等である。
イ 被告製法一において、懸濁液が充填される軟質ゼラチンカプセルは、着色剤は使用していないものの、素材自体が淡黄色のものであり、遮光性があるから、構成要件(二)の「遮光性軟質カプセル」に当たる。仮にそうでないとしても均等である。
<3> 構成要件(三)について
被告製法一は、構成要件(三)の「ドナリエラ藻体含有軟質カプセル食品の製造法」に当たる。
<4> 以上によれば、被告製法一は、本件発明の技術的範囲に属し、そうでないとしても、本件発明と均等である。
(2) 被告製法二について
<1> 構成要件(一)について
ア 被告製法二における「ミツロウ」は、構成要件(一)における「天然ロウ」に当たると同時に「乳化剤」にも当たるから、被告製法二の「ミツロウ」は、構成要件(一)の「天然ロウと乳化剤とを混和して得た乳化剤液」に当たる。仮にそうでないとしても、「ミツロウ」は乳化剤の性質があり、構成要件(一)の「天然ロウと乳化剤とを混和して得た乳化剤液」と使用目的及び作用効果が同じであり、置換可能性及び置換容易性があるから、これと均等である。
また、右ミツロウ三〇重量部のうち、二〇重量部を超える部分は、本件発明と異なる特段の作用効果をもたらさない単なる付加増量であるから、被告製法二における「三〇重量部のミツロウ」は、構成要件(一)の「一~一〇重量部の天然ロゥと一~一〇重量部の乳化剤とを混和して得た乳化剤液」に当たり、そうでないとしてもこれと均等である。
イ 被告製法二における「九三・八重量部のドナリエラ藻体乾燥粉末」は、構成要件(一)の「一〇~二四〇重量部のドナリエラ藻体乾燥粉末」に当たる。
ウ 被告製法二における「合計一三二・七重量部のしそ油、食用ゴマ油、米胚芽油」は、構成要件(一)の「一〇~二六〇重量部の動植物油脂」に当たる。
エ 被告製法二における「コピトールF-一〇〇〇-二中の天然ビタミンE」及び「アセロラ粉末中の天然ビタミンC」は、いずれも構成要件(一)の「抗酸化剤」に当たる。そして、右天然ビタミンE及び天然ビタミンCの合計一五・一重量部以上のうち、一〇重量部を超える部分は、本件発明と異なる特段の作用効果をもたらすものではなく、単なる付加増量であるから、被告製法二における「合計一五・一重量部以上の天然ビタミンE及び天然ビタミンC」は、構成要件(一)の「一~一〇重量部の抗酸化剤」に当たり、そうでないとしてもこれと均等である。
オ 被告製法二におけるカプセル封入懸濁液のその他の成分は、単なる付加物にすぎない。
カ 被告製法二において、各成分を「真空撹拌する」ことは、構成要件(一)における「真空下で撹拌処理する」ことに当たる。
<2> 構成要件(二)について
ア 被告製法二において、懸濁液のカプセルへの充填は、懸濁液を、密封タンクに封入して、密封構造の自動カプセル成型機にセットし、短時間にそれらの中に存する空気下で行われるところ、空気は窒素を七八・一パーセント含有する不活性な気体であるから、構成要件(二)の「不活性ガス」に当たる。したがって、被告製法二における懸濁液のカプセルへの充填は、構成要件(二)における「不活性ガスの存在下で」行われているといえる。仮にそうでないとしても、被告製法二では、抗酸化剤である天然ビタミンE及び天然ビタミンCが四・五重量部増量されている上、懸濁液を、密封タンクに封入して、密封構造の自動カプセル成型機にセットし、短時間にそれらの中に存する空気下で充填するところ、このような方法は、ドナリエラ藻体中のβ-カロチンを破壊することなく、その含有量を逓減することなく、ドナリエラ藻体の有効成分を安定に保有した健康上有用なカプセル食品が得られるという作用効果において、構成要件(二)における「不活性ガスの存在下で」充填を行う方法と同一であり、右方法と置換可能性、置換容易性があるから、これと均等である。
イ 被告製法二において、懸濁液が充填される軟質ゼラチンカプセルは、着色剤は使用していないものの、素材自体が淡黄色のものであり、遮光性があるから、構成要件(二)の「遮光性軟質カプセル」に当たる。仮にそうでないとしても均等である。
<3> 構成要件(三)について
被告製法二は、構成要件(三)の「ドナリエラ藻体含有軟質カプセル食品の製造法」に当たる。
<4> 以上によれば、被告製法二は、本件発明の技術的範囲に属し、そうでないとしても、本件発明と均等である。
(3) 被告製法三について
<1> 構成要件(一)について
ア 被告製法三における「ミツロウ」は、構成要件(一)における「天然ロウ」に当たると同時に「乳化剤」にも当たるから、被告製法三の「ミツロゥ」は、構成要件(一)の「天然ロウと乳化剤とを混和して得た乳化剤液」に当たる。仮にそうでないとしても、「ミツロウ」は乳化剤の性質があり、構成要件(一)の「天然ロウと乳化剤とを混和して得た乳化剤液」と使用目的及び作用効果が同じであり、置換可能性及び置換容易性があるから、これと均等である。
また、右ミツロウ二九・一重量部のうち、二〇重量部を超える部分は、本件発明と異なる特段の作用効果をもたらさない単なる付加増量であるから、被告製法三における「二九・一重量部のミツロウ」は、構成要件(一)の「一~一〇重量部の天然ロウと一~一〇重量部の乳化剤とを混和して得た乳化剤液」に当たり、そうでないとしてもこれと均等である。
イ 被告製法三における「九〇・九重量部のドナリエラ藻体乾燥粉末」は、構成要件(一)の「一〇~二四〇重量部のドナリエラ藻体乾燥粉末」に当たる。
ウ 被告製法三における「合計一三〇・五重量部のしそ油、食用ゴマ油、米胚芽油」は、構成要件(一)の「一〇~二六〇重量部の動植物油脂」に当たる。
エ 被告製法三における「コピトールF-一〇〇〇-二中の天然ビタミンE」及び「アセロラ粉末中の天然ビタミンC」は、いずれも構成要件(一)の「抗酸化剤」に当たる。そして、右天然ビタミンE及び天然ビタミンCの合計一四・五重量部以上のうち、一〇重量部を超える部分は、本件発明と異なる特段の作用効果をもたらすものではなく、単なる付加増量であるから、被告製法三における「合計一四・五重量部以上の天然ビタミンE及び天然ビタミンC」は、構成要件(一)の「一~一〇重量部の抗酸化剤」に当たり、そうでないとしてもこれと均等である。
オ 被告製法三におけるカプセル封入懸濁液のその他の成分は、単なる付加物にすぎない。
カ 被告製法三において、各成分を「真空撹拌する」ことは、構成要件(一)における「真空下で撹拌処理する」ことに当たる。
<2> 構成要件(二)について
ア 被告製法三において、懸濁液のカプセルへの充填は、懸濁液を、密封タンクに封入して、密封構造の自動カプセル成型機にセットし、短時間にそれらの中に存する空気下で行われるところ、空気は窒素を七八・一パーセント含有する不活性な気体であるから、構成要件(二)の「不活性ガス」に当たる。したがって、被告製法三における懸濁液のカプセルへの充填は、構成要件(二)における「不活性ガスの存在下で」行われているといえる。仮にそうでないとしても、被告製法三では、抗酸化剤である天然ビタミンE及び天然ビタミンCが四・五重量部増量されている上、懸濁液を、密封タンクに封入して、密封構造の自動カプセル成型機にセットし、短時間にそれらの中に存する空気下で充填するところ、このような方法は、ドナリエラ藻体中のβ-カロチンを破壊することなく、その含有旦里を逓減することなく、ドナリエラ藻体の有効成分を安定に保有した健康上有用なカプセル食品が得られるという作用効果において、構成要件(二)における「不活性ガスの存在下で」充填を行う方法と同一であり、右方法と置換可能性、置換容易性があるから、これと均等である。
イ 被告製法三において、懸濁液が充填される軟質ゼラチンカプセルは、着色剤は使用していないものの、素材自体が淡黄色のものであり、遮光性があるから、構成要件(二)の「遮光性軟質カプセル」に当たる。仮にそうでないとしても均等である。
<3> 構成要件(三)について
被告製法三は、構成要件(三)の「ドナリエラ藻体含有軟質カプセル食品の製造法」に当たる。
<4> 以上によれば、被告製法三は、本件発明の技術的範囲に属し、そうでないとしても、本件発明と均等である。
(4) 被告製法四について
<1> 構成要件(一)について
ア 被告製法四における「ミツロウ」は、構成要件(一)における「天然ロウ」に当たると同時に「乳化剤」にも当たるから、被告製法四の「ミツロウ」は、構成要件(一)の「天然ロウと乳化剤とを混和して得た乳化剤液」に当たる。仮にそうでないとしても、「ミツロゥ」は乳化剤の性質があり、構成要件(一)の「天然ロウと乳化剤とを混和して得た乳化剤液」と使用目的及び作用効果が同じであり、置換可能性及び置換容易性があるから、これと均等である。
また、右ミツロウ二三・四重量部のうち、二〇重量部を超える部分は、本件発明と異なる特段の作用効果をもたらさない単なる付加増量であるから、被告製法四における「二三・四重量部のミツロゥ」は、構成要件(一)の「一~一〇重量部の天然ロウと一~一〇重量部の乳化剤とを混和して得た乳化剤液」に当たり、そうでないしとしてもこれと均等である。
イ 被告製法四における「九二・一重量部のドナリエラ藻体乾燥粉末」は、構成要件(一)の「一〇~二四〇重量部のドナリエラ藻体乾燥粉末」に当たる。
ウ 被告製法四における「合計一三八・五重量部のしそ油、食用ゴマ油、米胚芽油」は、構成要件(一)の「一〇~二六〇重量部の動植物油脂」に当たる。
エ 被告製法四における「コピールF-一〇〇〇-二中の天然ビタミンE」及び「アセロラ粉末中の天然ビタミンC」は、いずれも構成要件(一)の「抗酸化剤」に当たる。そして、右天然ビタミンE及び天然ビタミンCの合計一五・二重量部以上のうち、一〇重量部を超える部分は、本件発明と異なる特段の作用効果をもたらすものではなく、単なる付加増量であるから、被告製法四における「合計一五・二重量部以上の天然ビタミンE及び天然ビタミンC」は、構成要件(一)の「一~一〇重量部の抗酸化剤」に当たり、そうでないとしてもこれと均等である。
オ 被告製法四におけるカプセル封入懸濁液のその他の成分は、単なる付加物にすぎない。
カ 被告製法四において、各成分を「減圧タンクに投入して減圧下で撹拌する」ことは、構成要件(一)における「真空下で撹拌処理する」ことに当たる。
<2> 構成要件(二)について
ア 被告製法四において、懸濁液のカプセルへの充填は、懸濁液を、密封タンクに封入して、密封構造の自動カプセル成型機にセットし、短時間にそれらの中に存する空気下で行われるところ、空気は窒素を七八・一パーセント含有する不活性な気体であり、構成要件(二)の「不活性ガス」に当たる。したがって、被告製法四における懸濁液のカプセルへの充填は、構成要件(二)における「不活性ガスの存在下で」行われているといえる。仮にそうでないとしても、被告製法四では、抗酸化剤である天然ビタミンE及び天然ビタミンCが五・二重量部増量されてい上、懸濁液を密封タンクに封入して、密封構造の自動カプセル成型機にセットレ、短時間にそれらの中に存する空気下で充填するところ、このような方法は、ドナリエラ藻体中のβ-カロチンを破壊することなく、その含有量を逓減することなく、ドナリエラ藻体の有効成分を安定に保有した健康上有用なカプセル食品が得られるという作用効果において、構成要件(二)における「不活性ガスの存在下で」充填を行う方法と同一であり、右方法と置換可能性、置換容易性があるから、これと均等である。
イ 被告製法四において、懸濁液が充填される軟質ゼラチンカプセルは、着色剤は使用していないものの、素材自体が淡黄色のものであり、遮光性があるから、構成要件(二)の「遮光性軟質カプセル」に当たる。仮にそうでないとしても均等である。
<3> 構成要件(三)について
被告製法四は、構成要件(三)の「ドナリエラ藻体含有軟質カプセル食品の製造法」に当たる。
<4> 以上によれば、被告製法四は、本件発明の技術的範囲に属し、そうでないとしても、本件発明と均等である。
(二) 被告の主張
被告製法一ないし四(以下、総称して「被告各製法」という。)は、以下のとおり、本件発明の構成要件(一)、(二)を充足しない。
(1) 構成要件(一)について
<1> 被告各製法における「ミツウ」は、構成要件(一)における「天然ロウ」には当たるが、「乳化剤」には当たらない。乳化剤とは、通常水と混ざらない油のような有機液体と水とが安定なエマルジョンを作るために加えられる物質であるが、そもそも被告製品一ないし四には水が使用されていないので乳化剤の使用を必要としない。したがって、被告各製法では、構成要件(一)における天然ロウと乳化剤とを混和して乳化剤液を得る工程が存在しない。
また、被告各製法における「ミツロウ」の使用量は、いずれも構成要件(一)で限定された「天然ロウ」の使用量(一~一〇重量部)の範囲を超えている。
したがって、被告各製法は構成要件(一)を充足しない。
<2> 被告各製法における「コピトールF-一〇〇〇-二中の天然ビタミンE」及び「アセロラ粉末中の天然ビタミンC」がいずれも構成要件(一)の「抗酸化剤」に当たることは認めるが、右天然ビタミンE及び天然ビタミンCの合計重量部のうち、一〇重量部を超える部分が単なる付加増量であり、構成要件(一)の「一~一〇重量部の抗酸化剤」を充足し、そうでないとしてもこれと均等であるとの主張は争う。
<3> 被告各製法において、各成分を撹拌処理して懸濁液を得る工程は、いずれも構成要件(一)の「真空下」で行われていないから、被告各製法は構成要件(一)を充足しない。
(2) 構成要件(二)について
<1> 構成要件(二)の「不活性ガス」とは、周期表第0族に属する「ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン」、又は窒素ガスを意味する。他方、被告各製法における懸濁液の軟質カプセルへの充填は空気開放下で行われるところ、空気は右「不活性ガス」ではない。したがって、被告各製法は、懸濁液を「不活性ガスの存在下で」軟質カプセルに充填するとの工程を欠くから、構成要件(二)を充足しない。
<2> 被告各製法において、懸濁液が充填される軟質カプセルの基質は、ゼラチン、グリセリン、逆浸透圧ろ過水(被告製法一及び四の場合)又は精製水(被告製法二及び三の場合)のみが使用され、カラメル等の着色剤は使用されていない。したがって、被告各製法における軟質カプセルは、構成要件(二)における「遮光性」の性質を有しないから、被告各製法は構成要件(二)を充足しない。
4 争点4(原告会社の独占的通常実施権)について
(一) 原告会社の主張
原告会社は、本件特許権に関し、特許権者である原告田中との間の平成四年四月一日付けの契約による独占的通常実施権を有するから、これに基づいて、本件特許権を侵害する被告に対し、侵害行為の差止め及び損害賠償の請求ができる。
(二) 被告の主張
原告会社の主張を争う。
5 争点5(原告会社の損害額)
(一) 原告会社の主張
被告は、平成五年九月から同六年八月三一日までの間に、被告製品二ないし四を販売することによって三六七二万円を下回らない利益を得ており、右金額は、原告会社が本件特許権に関する独占的通常実施権の侵害によって受けた損害の額と推定される。
(二) 被告の主張
原告会社の主張を争う。
第三 争点に対する判断
一 争点3(構成要件充足性、均等)について
1 構成要件(一)の「一~一〇重量部の天然ロゥと一~一〇重量部の乳化剤とを混和して得た乳化剤液」との部分の充足性について
被告各製法において「ミツロウ」が用いられ、それが構成要件(一)の「天然ロウ」に当たることは、当事者間に争いがないところ、原告らは、被皆各製法で用いられている「ミツロウ」は、構成要件(一)の「天然ロゥ」に当たると同時に「乳化剤」にも当たるから、結局のところ、右「ミツロウ」は、それのみで「天然ロウと乳化剤とを混和して得た乳化剤液」に当たる旨主張する。
しかしながら、本件発明において、「天然ロゥ」と「乳化剤」とが別個の物質であり、これら二つの成分を混和するという工程によって「乳化剤液」が得られるべきことは、特許請求の範囲の文言自体から明らかである。また、本件発明の明細書(以下「本件明細書」という。)の発明の詳細な説明においても、「本発明での、天然ロウとしては、ラノリン、蜜ロウなど、乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、モノグリセライドなどであり、何れも一~一〇重量部としたのは、乳化剤液として好適であり、かつβーカロチンの安定化と懸濁液のカプセル封入時の切れの良さがあり」(本件公報三欄一一行目ないし一六行目)と記載され、「天然ロウ」と「乳化剤」とが別個の物質であり、これらが所定の分量割合で混和されたものが、乳化剤液として好適であると同時に、βーカロチンの安定化と懸濁液のカプセル封入時の切れの良さという効果を発揮するものであることが示されており、しかも、「ミツロウ」は「天然ロウ」として明示されている。
したがって、被告各製法における「ミツロゥ」という一つの物質が「天然ロゥと乳化剤とを混和して得た乳化剤液」に当たるとする原告らの主張は理由がなく、弁論の全趣旨によると、被告各製法において他に右「乳化剤液」は存在しないものと認められるから、被告各製法はいずれも、構成要件(一)のうちの「一~一〇重量部の天然ロウと一~一〇重量部の乳化剤とを混和して得た乳化剤液」との部分を充足しない。
2 構成要件(一)の「一~一〇重量部の抗酸化剤」との部分の充足性について被告各製法において「コピトールF-一〇〇〇-二中の天然ビタミンE」及び「アセロラ粉末中の天然ビタミンC」が用いられ、これらがいずれも構成要件(一)の「抗酸化剤」に当たることは当事者間に争いがない。そして、被告各製法における天然ビタミンE及び天然ビタミンCの合計分量は、カプセル封入懸濁液三〇〇重量部に対し、被告製法一では一四・五重量部以上、被告製法二では一五・一重量部以上、被告製法三では一四・五重量部以上、被告製法四では一五・二重量部以上であり、いずれも一〇重量部を超えるものであるところ、原告らは、これら一〇重量部を超える部分は本件発明と異なる作用効果をもたらさず単なる付加増量であるから、構成要件(一)の「一~一〇重量部の抗酸化剤」との部分を充足する旨主張する。
しかしながら、本件発明の特許請求の範囲における「一~一〇重量部の抗酸化剤」との文言が、懸濁液中に含まれる抗酸化剤に当たる成分の分量の上限と下限を一義的に定めたものであることは明らかである。また、本件明細書の発明の詳細な説明における「抗酸化剤としては、ビタミンC・Eが好ましく、βーカロチンと動植物油脂の安定化の目的には、その使用量が、一重量部未満では効果が得られず、一〇重量部を超える場合には、効果が変わらず経済的でないのである。」(本件公報三欄二二行目ないし二七行目)との記載によると、本件発明における抗酸化剤の分量の限定は、抗酸化剤に必要な抗酸化作用を発揮させつつ、商品としての経済的な無駄を避けるという技術的意義を有するものというべきであるから、抗酸化剤の分量が一重量部未満のため必要な抗酸化作用が得られない場合はもちろんのこと、その分量が一〇重量部を超え経済的な無駄を生じさせる場合にも、右技術的意義からみて、本件発明の技術的範囲に属さないことになるのは当然というべきである。
以上によれば、原告の前記主張は理由がなく、被告各製法はいずれも、抗酸化剤に当たる成分の分量が一〇重量部を超えるから、構成要件(一)のうちの「一~一〇重量部の抗酸化剤」との部分を充足しない。
3 構成要件(二)の「不活性ガスの存在下」との部分の充足性について
被告各製法において、懸濁液の軟質カプセルへの充填が空気の存在下でされることは、当事者間に争いがない。そして、原告らは、空気は、構成要件(二)の「不活性ガス」に当たるから、被告各製法において、懸濁液の軟質カプセルへの充填が「不活性ガスの存在下」でされると主張する。
しかしながら、乙第四、第五号証(化学大辞典)によると、「不活性気体」は、「化学的に不活性であるような気体をいう。通常希ガス類元素に属する元素の気体をいうが、その他窒素のような気体をも含めていう場合もある。」と定義されること、「化学的に不活性である」とは、化学的にきわめて安定であって、普通の条件の下では他の元素及び化合物と反応しないことを意味すること、希ガス類元素とは、周期表第0族に属する「ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン」を意味すること、以上の各事実が認められる。空気には、窒素のみならず、酸素が含まれるから、右のような意味での化学的に不活性な気体といえないことは明らかである。
本件明細書の発明の詳細な説明の記載には、「不活性ガス」の意義について格別の記載はないから、「不活性ガス」については、右のように理解すべきであるということができる。
そうすると、被告各製法において、懸濁液の軟質カプセルへの充填が空気の存在下でされるからといって、懸濁液の軟質カプセルへの充填が「不活性ガスの存在下」でされるということはできず、弁論の全趣旨によると、被告各製法において他に懸濁液の軟質カプセルへの充填が「不活性ガスの存在下」でされるというべき事実は存在しないものと認められるから、被告各製法は、構成要件(二)のうちの「不活性ガスの存在下」との部分を充足しない。
4 原告らの均等の主張について
原告らは、被告各製法が前記1ないし3記載の本件発明の構成要件の一部を充足しないとしても、被告各製法は本件発明と均等であると主張する。
特許請求の範囲に記載された方法の構成中に相手方が使用する方法(以下「相手方方法」という。)と異なる部分が存在する場合であっても、<1>右部分が特許発明の本質的部分ではなく、<2>右部分を相手方方法におけるものと置き換えても、特許発明の目的を達成することができ、同一の作用効果を奏するものであって、<3>右のように置き換えることに、当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、相手方方法の使用の時点において容易に想到することができたものであり、<4>相手方方法が、特許発明の特許出願時における公知技術と同一又は当業者がこれから右出願時に容易に推考できたものではなく、かつ、<5>相手方方法が特許発明の特許出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情もないときは、右相手方方法は、特許請求の範囲に記載された構成と均等なものとして、特許発明の技術的範囲に属するものと解するのが相当であり(最高裁第三小法廷平成一〇年二月二四日判決・民集五二巻一号一一三頁)、右各要件のうち、少なくとも<1>ないし<3>の要件は均等を主張する者が、主張・立証責任を負うと解すべきである。
構成要件(一)の「一~一〇重量部の天然ロウと一~一〇重量部の乳化剤とを混和して得た乳化剤液」との部分について、原告らは、「ミツロゥ」は乳化剤の性質があり、構成要件(一)の「天然ロウと乳化剤とを混和して得た乳化剤液」と使用目的及び作用効果が同じであると主張し、甲第一七号証によると、「ミツロウ」には、乳化作用があることが認められるが、それのみで、「ミツロゥ」が、本件発明における前記1認定の作用効果、すなわち、「天然ロウ」と「乳化剤」とが所定の分量割合で混和されることにより、乳化剤液として好適であると同時に、βーかロチンの安定化と懸濁液のカプセル封入時の切れの良さという効果を発揮することを認めることはできず、他にこの事実を認めるに足りる証拠はない。そして、原告らは、それ以上に、右<1>ないし<3>の要件の存在について具体的に主張・立証をしないから、被告各製法の「ミツロウ」が、構成要件(一)の「一~一〇重量部の天然ロウと一~一〇重量部の乳化剤とを混和して得た乳化剤液」との部分と均等であると認めることはできない。
構成要件(一)の「一~一〇重量部の抗酸化剤」との部分について、原告らは、右<1>ないし<3>の要件の存在について具体的に主張・立証をしないから、被告各製法が、構成要件(一)の「一~一〇重量部の抗酸化剤」との部分と均等であると認めることはできない。
構成要件(二)の「不活性ガスの存在下」との部分について、原告らは、被告各製法においては、抗酸化剤が増量されている上、密閉されたところで短時間に懸濁液を軟質カプセルへ充填するから、ドナリエラ藻体中のβーカロチンを破壊することなく、その含有量を逓減することなく、ドナリエラ藻体の有効成分を安定に保有した健康上有用なカプセル食品が得られるという作用効果において、構成要件(二)における「不活性ガスの存在下で」充填を行う方法と同一である旨主張する。本件明細書の発明の詳細な説明によると、本件発明において、不活性ガスの存在下で懸濁液を軟質カプセルへ充填するのは、「βーカロチンや動植物性油脂を劣化するのを防止するためである」(本件公報四欄四行目ないし五行目)ところ、被告各製法においては、空気の存在下で充填する以上、直ちに、不活性ガスの存在下で充填するのと同様にβーカロチンや動植物性油脂の劣化が防止されるとは認められない上、原告らは、右以上に、右<1>ないし<3>の要件の存在について具体的に主張・立証をしないから、被告各製法の懸濁液を軟質カプセルへ充填する方法が、構成要件(二)の「不活性ガスの存在下で」との部分と均等であると認めることはできない。
したがって、本件において、被告各製法が本件発明と均等であることを認めることはできない。
5 以上によると、被告各製法はいずれも、本件発明の構成要件(一)のうちの「一~一〇重量部の天然ロウと一~一〇重量部の乳化剤とを混和して得た乳化剤液」との部分及び「一~一〇重量部の抗酸化剤」との部分並びに構成要件(二)のうちの「不活性ガスの存在下」との部分をいずれも充足せず、右各部分に関し本件発明と均等であるとも認められないから、本件発明の技術的範囲に属しない。
二 よって、原告らの本訴請求は、その余の点につき判断するまでもなく理由がないから、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 森義之 裁判官 榎戸道也 裁判官 大西勝滋)
物件目録
一
商品名 マイクロアルジェZION(シオン)
名称 マイクロアルジェ加工食品
内容量 三三〇mg/カプセル
原材料名 ( )内は一カプセル当り三〇〇重量部に換算した数値
デュナリエラ藻体乾燥粉末 一〇〇mg (九〇、九重量部)
コピトールF-一〇〇〇-二(規格・天然ビタミンE六〇%以上)
二〇mg[一八、二重量部(天然ビタミンE一〇・九重量部以上)]
アセロラ粉末(規格・天然ビタミンC二〇%以上)
二〇mg[一八、二重量部(天然ビタミンC三・六重量部以上)]
キトサン 一mg
(〇、九重量部)
ニッサンオクタコサノール 〇、五mg
(〇、五重量部)
しそ油 一〇〇、〇mg
(九〇、九重量部)
食用ゴマ油 四七、〇mg
(四二、七重量部)
米胚芽油 一〇、〇mg
(九、一重量部)
三〇%βーカロチン懸濁油 一五、〇mg
(一三、六重量部)
ミツロウ 一六、五mg
(一五、〇重量部)
被膜剤 ゼラチン/グリセリン/逆浸透圧ろ過水カプセル
二
商品名 マイクロアルジェZION(シオン)
名称 マイクロアルジェ加工食品
内容量 三二〇mg/カプセル
原材料名 ( )内は一カプセル当り三〇〇重量部に換算した数値
デュナリエラ藻体乾燥粉末 一〇〇mg
(九三、八重量部)
コピトールF-一〇〇〇-二(規格・天然ビタミンE六〇%以上)
二〇mg[一八、八重量部(天然ビタミンE一一・三重量部以上)]
アセロラ粉末(規格・ビタミンC二〇%以上)
二〇mg[一八、八重量部(天然ビタミンC三・八重量部以上)]
キトサン 一mg
(〇、九重量部)
ニッサンオクタコサノール 〇、五mg
(〇、五重量部)
しそ油 八九、五mg
(八三、九重量部)
食用ゴマ油 四二、〇mg
(三九、四重量部)
米胚芽油 一〇、〇mg
(九、四重量部)
三〇%β-カロチン懸濁油 五、〇mg
(四、七重量部)
ミツロウ 三二、〇mg
(三〇、〇重量部)
被膜剤 ゼラチン/グリセリン/精製水 カプセル
三
商品名 マイクロアルジェZION(シオン)
名称 マイクロアルジェ加工食品
内容量 三三〇mg/カプセル
原材料名 ( )内は一カプセル当り三〇〇重量部に換算した数値
デュナリエラ藻体乾燥粉末 一〇〇mg
(九〇、九重量部)
コピトールF-一〇〇〇-二(規格・天然ビタミンE六〇%以上)
二〇mg[一八、八重量部(天然ビタミンE一〇・九重量部以上)]
アセロラ粉末(規格・天然ビタミンC二〇%以上)二〇mg[一八、八重量部(天然ビタミンC三・六重量部以上)]
キトサン 一mg
(〇、九重量部)
ニッサンオクタコサノール 〇、五mg
(〇、五重量部)
しそ油 九一、五mg
(八三、二重量部)
食用ゴマ油 四二、〇mg
(三八、二重量部)
米胚芽油 一〇、〇mg
(九、一重量部)
三〇%β-カロチン懸濁油 一三、〇mg
(一一、八重量部)
ミツロウ 三二、〇mg
(二九、一重量部)
被膜剤 ゼラチン/グリセリン/精製水 カプセル
四
商品名 マイクロアルジェZION(シオン)
名称 マイクロアルジェ加工食品
内容量 三二〇mg/カプセル
原材料名 ( )内は一カプセル当り三〇〇重量部に換算した数値
デュナリエラ藻体乾燥粉末 九八、二mg
(九二、一重量部)
コピトールF-一〇〇〇-二
(規格・天然ビタミンE六〇%以上)
一九、六mg[一八、四重量部(天然ビタミンE一一・五重量部以上)]
アセロラ粉末(規格・天然ビタミンC二〇%以上)一九・六mg[一八、四重量部(天然ビタミンC三・七重量部以上)]
キトサン 一mg
(〇、九重量部)
ニッサンオクタコサノール 〇、五mg
(〇、五重量部)
しそ油 八八、四mg
(八二、九重量部)
食用ゴマ油 四九、五mg
(四六、四重量部)
米胚芽油 九、八mg
(九、二重量部)
三〇%β-カロチン懸濁油 八、四mg
(七、九重量部)
ミツロウ 二五、〇mg
(二三、四重量部)
被膜剤 ゼラチン/グリセリン/逆浸透圧ろ過水
カプセル
制法目録
一
1(1)カプセル封入懸濁液の三〇〇重量部に対し、九〇・九重量部のしそ油、四二・七重量部の食用ゴマ油、九・一重量部の米胚芽油、一八・二重量部(天然ビタミンE一〇・九重量部以上)のコピトールF-一〇〇〇-二(天然ビタミンE六〇%以上)、一五重量部のミツロウを加温ジャケット付タンクに投入し、空気開放下で各成分を混合攪拌しながら加温溶解した後、冷却し、つづいて九〇・九重量部のドナリエラ藻体乾燥粉末、一八・二重量部(天然ビタミンC三・六重量部以上)のアセロラ粉末(天然ビタミンC二〇%以上)、〇・九重量部のキトサン、〇・五重量部のニッサンオクタコサノール、一三・六重量部の三〇%β-カロチン懸濁油を加えて空気開放下で均一に混合攪拌する。
(2)つぎに、この液をコロイドミルで粉砕したのち、攪拌によって生じた気泡を脱泡するため減圧タンクに投入して減圧下で攪拌して脱泡する。
2 前記1とは別に軟質ゼラチンカプセル基質として、ゼラチン、グリセリン、逆浸透圧ろ過水のみを使用し、着色剤を使用することなく、加温しつつ攪拌する。ゼラチンが完全に溶解したのち、脱泡のため減圧する。
3 1の懸濁液及び2のカプセル材を自動カプセル成型機にセットし、窒素ガスを使用することなく空気開放下で懸濁液を軟質カプセル剤に充填し、カプセル粒を成型する。
4 カプセル粒を二五~三〇℃で一五~三六時間乾燥してドナリエラ藻体含有軟質カプセル食品とする。
二
1(1)カプセル封入懸濁液の三〇〇重量部に対し、七・九重量部のしそ油、三九・四重量部の食用ゴマ油、三〇重量部のミツロウを加温溶解し、撹拌によって生ずる気泡を脱泡するために減圧する。
(2)別に、七六重量部のしそ油、九・四重量部の米胚芽油、九三・八重量部のドナリエラ藻体乾燥粉体、一八・八重量部(天然ビタミンC三・八重量部以上)のアセロラ粉末(天然ビタミンC二〇%以上)、〇・九重量部のキトサン、〇・五重量部のニッサンオクタコサノールを減圧脱泡しつつ撹拌する。
(3)右(1)(2)で得られた液に一八・八重量部(天然ビタミンE一一・三重量部以上)のコピトールF-一〇〇〇-二(天然ビタミンE六〇%以上)を加えて大気圧下で撹拌し、徐冷後四・七重量部の三〇%β-カロチン懸濁油を加え、脱泡のため減圧して撹拌する。
2 前記1とは別に軟質ゼラチンカプセル基質として、ゼラチン、グリセリン、精製水のみを使用し、着色剤を使用することなく、加温しつつ攪拌する。ゼラチンが完全に溶解したのち、脱泡のため減圧する。
3 1の懸濁液及び2のカプセル材を自動カプセル成型機にセットし、窒素ガスを使用することなく空気開放下で懸濁液を軟質カプセル剤に充填し、カプセル粒を成型する。
4 カプセル粒を回転式乾燥機で三-六時間乾燥したのち、乾燥室で乾燥してドナリエラ藻体含有軟質カプセル食品とする。
三
1(1)カプセル封入懸濁液の三〇〇重量部に対し、七・九重量部のしそ油、三八・二重量部の食用ゴマ油、二九・一重量部のミツロウを加温溶解し、撹拌によって生ずる気泡を脱泡するために減圧する。
(2)別に、七五・三重量部のしそ油、九・一重量部の米胚芽油、九〇・九重量部のドナリエラ藻体乾燥粉体、一八・八重量部(天然ビタミンC三・六重量部以上)のアセロラ粉末(天然ビタミンC二〇%以上)、〇・九重量部のキトサン、〇・五重量部のニッサンオクタコサノールを減圧脱泡しつつ撹拌する。
(3)右(1)(2)で得られた液に一八・八重量部(天然ビタミンE一〇・九重量部以上)のコピトールF-一〇〇〇-二(天然ビタミンE六〇%以上)を加えて大気圧下で撹拌し、徐冷後一一・八重量部の三〇%β-カロチン懸濁油を加え、脱泡のため減圧して撹拌する。
2 前記1とは別に軟質ゼラチンカプセル基質として、ゼラチン、グリセリン、精製水のみを使用し、着色剤を使用することなく、加温しつつ攪拌する。ゼラチンが完全に溶解したのち、脱泡のため減圧する。
3 1の懸濁液及び2のカプセル材を自動カプセル成型機にセットし、窒素ガスを使用することなく空気開放下で懸濁液を軟質カプセル剤に充填し、カプセル粒を成型する。
4 カプセル粒を回転式乾燥機で三-六時間乾燥したのち、乾燥室で乾燥してドナリエラ藻体含有軟質カプセル食品とする。
四
1(1)カプセル封入懸濁液の三〇〇重量部に対し、八二・九重量部のしそ油、四六・四重量部の食用ゴマ油、九・二重量部の米胚芽油、一八・四重量部(天然ビタミンE一一・五重量部以上)のコピトールF-一〇〇〇-二(天然ビタミンE六〇%以上)、二三・四重量部のミツロウを加温ジャケット付タンクに投入し、空気開放下で各成分を混合攪拌しながら加温溶解した後、冷却し、つづいて九二・一重量部のドナリエラ藻体乾燥粉末、一八・四重量部(天然ビタミンC三・七重量部以上)のアセロラ粉末(天然ビタミンC二〇%以上)、〇・九重量部のキトサン、〇・五重量部のニッサンオクタコサノール、七・九重量部の三〇%β-カロチン懸濁油を加えて空気開放下で均一に混合攪拌する。
(2)つぎに、この液をコロイドミルで粉砕したのち、攪拌によって生じた気泡を脱泡するため減圧タンクに投入して減圧下で攪拌して脱泡する。
2 前記1とは別に軟質ゼラチンカプセル基質として、ゼラチン、グリセリン、逆浸透圧ろ過水のみを使用し、着色剤を使用することなく、加温しつつ攪拌する。ゼラチンが完全に溶解したのち、脱泡のため減圧する。
3 1の懸濁液及び2のカプセル材を自動カプセル成型機にセットし、窒素ガスを使用することなく空気開放下で懸濁液を軟質カプセル剤に充填し、カプセル粒を成型する。
4 カプセル粒を二五~三〇℃で一五~三六時間乾燥してドナリエラ藻体含有軟質カプセル食品とする。
<19>日本国特許庁(JP) <11>特許出願公告
<12>特許公報(B2) 平4-75752
<51>Int.Cl.3A 23 L 1/48 // C 12 N 1/12 織別記号 C 庁内整理番号 8114-4B 7236-4B<24><44>公告 平成4年(1992)12月1日 請求項の数 1
<54>発明の名称 ドナリエラ藻体含有軟質カプセル食品とその製造法
<21>特願 昭63-40755 <55>公開 平1-215264
<22>出願 昭63(1988)2月25日 <43>平1(1989)8月29日
<72>発明者 田中美穂 岐阜県岐阜市山口町22番地
<71>出願人 田中美穂 岐阜県岐阜市山口町22番地
<74>代理人 弁理士 遠山俊一
審査官 鈴木恵理子
<57>特許請求の範囲
1 カプセル封入懸濁液の300重量部に、1~10重量部の天然ロウと1~10重量部の乳化剤とを混和して得た乳化剤液に、上記カプセル封入懸濁液の300重量部に対する割合が、10~240重量部のドナリエラ藻体乾燥粉末と10~260重量部の動植物油脂と1~10重量部の抗酸化剤とを、真空下で撹拌処理して懸濁液を得た後、得られた懸濁液を、不活性ガスの存在下で、遮光性軟質カプセルに充填することを特徴とするドナリエラ藻体含有軟質カプセル食品の製造法。
発明の詳細な説明
〔産業上の利用分野〕
本発明は、ドナリエラ藻体中に含有されている有効成分、特に、β-カロチンを変質させることなく利用した健康上有用な食品とその製造方法に関する。
〔従来技術〕
単細胞緑藻類のクロレラは、その藻体からの熱水抽出液や藻体乾燥粉末を食品用添加物または健康志向錠剤とすることは従来周知となつており、また、ドナリエラについては、高濃度の食塩水、窒素分の少ない栄養分、強度の太陽光線などの適当な条件で培養すると多量にβ-カロチンを産生すること、およびドナリエラ藻体から分離した天然β-カロチンを植物油懸濁液となして、食品、化粧品または飼料などの天然着色料として利用すること、または、健康食品添加物として利用することは従来周知である。しかし、ドナリエラ藻体自体を、β-カロチンを破壊することなく利用して、健康志向食品用とすることはこれまで全くなかつた。
〔発明が解決しようとする問題点〕
ドナリエラ藻体は、たんばく質、脂質、糖質、鉄分、ビタミン類その他を含有しているが、この藻体を食用とするに当たり、共役結合を持つβ-カロチン(プロビタミンA)を損じることなく加工し、かつ、製品を安定に保存させることについて研究した結果、ドナリエラ藻体自体を健康食品とする本発明を達成したのである。
〔問題点を解決するための手段〕
本発明は、カプセル充填量300重量部に対し、天然ロウと乳化剤とを1~10重量部づつ加えて得た乳化剤液に、上記充填量300重量部に対する割合が、10~240重量部のドナリエラ藻体乾燥粉末と10~260重量部の動植物油脂と1~10重量部の抗酸化剤とを真空下で撹拌処理して懸濁液を得た罪、当該懸濁液を不活性ガスの存在下で、遮光性軟質カプセルに充填することから成るドナリエラ藻体含有軟質カプセル食品の製造法である。
本発明でのドナリエラ藻体乾燥粉末とは、培養したドナリエラ藻体の培養液を、予め乾燥し易いように遠心分離した水分を、好ましくは50%程度に逓減した後、これにケーキング防止剤として、好ましくはデキストリンと抗酸化剤として、好ましくはビタミンC・E等とを適量添加し、噴霧乾燥、真空乾燥または凍結乾燥して得たドナリエラ藻体の乾燥粉末を意味する。
また、ドナリエラ藻体の形態は、例えば、同じ緑藻類であるクロレラに比べて、多糖類の固い細胞壁を有しない生物で、薄い細胞膜に被われているに過ぎず、β-カロチンは、極めて多量に含んでいる。そして、本発明で使用されるドナリエラ藻体の代表的種類としては、ドナリエラ・バーダウイル(Dunaliella bardawil)とドナリエラ・サリーナ(Dunaliella salina)が好適である。
本発明での、天然ロウとしては、ラノリン、蜜ロウなど、乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、モノグリセライドなどであり、何れも1~10重量部としたのは、乳化剤液として好適であり、かつβ-カロチンの安定化と懸濁液のカプセル封入時に切れの良さがあり、また動植物油としては、トウモロコシ油、パーム油、オリーブ油などが好ましく、懸濁液のカプセル封入時に流動性をもたらすと共に賦型剤的役割をももたらすためであり、その使用重量が、10重量部未満では効果が得られず、260重量部を超えてた場合は、効果が変わらず経済的でなく、また、抗酸化剤としては、ビタミンC・Eが好ましく、β-カロチンと動植物油脂の安定化の目的には、その使用量が、1重量部未満では効果が得られず、10重量を超えた場合には、効果が変わらず経済的でないのである。
そして、真空下で、乳化剤と動植物油脂と抗酸化剤(好ましくはビタミンC・E)とドナリエラ藻体乾燥粉末とを撹拌乳化処理するのは、β-カロチンと動植物油脂との劣化を防ぎつつ、ドナリエラ藻体乾燥粉末の懸濁液を得るためであり、また該懸濁液を軟質カプセルに充填するに当たり、不活性ガス下で行うのも、β-カロチンや動植物油脂を劣化するのを防止するためである。また懸濁液の粘度は7000~8000cpsとするのが好ましく、また乳化液、例えばモノグリセライドおよび天然ロウ、例えば蜜ロウとから成る乳化剤液の粘度は2000cps程度が好ましい。
実施例
モノグリセライド10mgと蜜ロウ10mgを約60℃程度に加温しつつ約15分間撹拌して乳化剤(2000cp)液を得た。
得られた乳化剤とドナリエラ藻体乾燥粉末100mg、ビタミンE2mg、コーン油178mgとを真空乳化機、パドルミキサーで700回転、次いでホモミキサーで100回転で撹拌乳化した後、カラメルで着色した軟質ゼラチンカブセル基剤を使用して、窒素ガス存在下で、常法により軟質カプセル化して製品を得た。
〔発明の効果〕
本発明によれば、ドナリエラ藻体乾燥粉末中のβ-カロチンを破壊することなく、その含有量を逓減することなくして、ドナリエラ藻体の有効成分を安定に保有した健康上有用なカプセル食品が得られたのである。
また、本発明は、実質上、天然β-カロチンの活性を消失することなしに利用することが困難であつた従来技術では見られない優れた効果を達成し得た点で、その効果は顕著なものである。
特許公報
<省略>